-想い出-

想うこと・1
想うこと・2
想うこと・3

・2

電車の中から



線路の枕木をコツコツと音を鳴らして歩く。
線路を、あるいは線路沿いを歩く。

ある時は西に日が傾くあたり、風呂に入る。
それは母の実家でのこと。
特別なことはなにもない、ある日の出来事。

澄み切った、気持ちの良い日差しが、
手をつないだ二人にそそぎ、
緑の中を通り抜けた風は、
少しだけ開けられた風呂場の窓から入るこむ。

いつの頃からか、ささやかな二人の時間はなくなった。


晩秋の夕暮れは早い。
母は自転車を引きながら、私たちを駅まで送るという。
「今日は悪かったねぇ。」そう何度も口にしながら。
その度に私は「また、すぐ遊びに来るから、仕事が休みの時にね。」
改札口を抜けた私たちに向かって、母は手を振った。
その日は電車がホームから離れるまで、
私たちが見える限りに移動しながら、手を振った。

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